Trinacria-トリナクリア
地中海に浮かぶ太陽の島、シチリア。シチリアを訪れると必ず目にする人の顔から3本の足が螺旋状に飛び出すオブジェを見かけます。これはトリナクリアといい、その昔シチリアはトリナキエという別名でも呼ばれておりこれが語源となっています。
異文化が入り混じり独特の文化を繁栄させたシチリアのシンボルをご紹介します。
イタリア国土はおおまかに本島であるイタリア半島、シチリア島そしてサルデーニャ島から成ります。イタリアにはたくさん世界遺産があり、またそれ以外にも魅力あふれる都市がたくさんあるため最初の旅行でシチリア島まで足を伸ばせる人はあまり多くはないでしょう。イタリアの国土はブーツの形に例えられますがシチリア島はまるでイタリア本島がサッカーボールを蹴りあげているような感じで地中海に浮かんでいます。
シチリア島、つまりシチリア州(25,711㎢)は20州あるイタリアの中で最も大きな州(regione)でありイタリア国土全体の8.4%を占めます。どのくらい大きかというと日本の九州と四国の中間ぐらいの大きさといえば少しイメージがつきやすいかもしれません。ついでにいうと日本で一番大きな都道府県といえば北海道。北海道の面積は83,450 km²であり九州全体の2倍の大きさがあります。シチリア州はイタリアで最も大きいとはいえ北海道の30%の大きさなのです。
さて日本ではシチリアのイメージといえばやはりあのゴッドファーザーでお馴染みのマフィア、燦々と照りつける太陽とレモンなどが挙げられるでしょう。あなたはシチリアと聞いてどんなものを思い浮かびますか?
もう少しシチリアに関して情報がある人はきっと活火山であるエトナ山、アグリジェントにあるギリシャ神殿、カンノーロといったシチリア独特のお菓子が思い浮かぶことでしょう。
そして今回のトピックであるシチリアのシンボルは旅行ガイドを見たり町を歩いたりするとよく目にする“真ん中に顔があり、そこから3本の足が飛び出している絵柄”-トリナクリア-。シチリアの町やお土産屋さんに行くと必ずといってあるこのマーク △ 。トリナクリアはシチリアの州旗にも描かれています。そのデザインは黄色と赤のバックグラウンドの真ん中にトリナクリア。黄色はパレルモの町、赤色はコルレオーネの町を象徴しています。これは1282年フランスとの戦いの際、フランスの攻撃を跳ね返した最初の町がパレルモ、そしてその次がコルレオーネだったことがこの黄色と赤の背景にあります。
その昔シチリアには古代種族であるシクリ人とシカーニ人が住んでいたことからシケリア島と呼ばれていました。これが後にシチリアという呼び名になったのです。一方でシケニア島は三角形の地形を持つことから“Thrinakie トリナキエ”という別名も持っていました。これがトリナクリアの語源です。そしてトリナキエ、つまりトリナクリアとは古代ギリシャ語で「3本の岬」という意味なのです。確かに! シチリアの地形を見ると三角形の形をしておりこの名前がついたのも納得ができます。この3本の岬はリリベオ岬(マルサーラの近く)、ペローロ岬(メッシーナの近く)、パキーノ岬(シラクーザから南下したところ)を指します。
トリナクリアの真ん中にある顔はギリシャ神話で出てくるメドゥーサの顔。メドゥーサといえば映画3Dの「タイタンの戦い」で出てきた怪物で毒蛇の頭髪を持ち、見たものを石に変えてしまうという恐ろしい怪物です。怪物である彼女はもともと女神だったともいわれ、メドゥーサはギリシャ語で「支配する女王」という意味になります。 ではなぜギリシャ神話のメドゥーサがシチリアに関係するのか若干不思議な気もしますが、シチリアは地理的条件よりギリシャ、古代ローマ、アラブ、ノルマンなど様々な民族から侵略を受け文化が影響したからこのようなシンボルが生まれたようです。
一方でトリナクリアの真ん中にある顔は豊穣の神であるバール(il dio Baal)とも言われ3本の足は春・夏・冬を示すという説、はたまたトリナクリアのらせん状に伸びた3本の足がアフリカ・中近東・アジアを示すという説や膝から折り曲げられた白い足はギリシャのスパルタ戦士の権力を示すという説など色々とあります。 シチリアを訪れたらシチリア人に是非ともトリナクリアは何を示しているのか聞いてみてください。今まで聞いたことがなかった説が聞けるかもしれません。
様々な文化が融合したシチリアはイタリア本土とは違った面を持っています。今回はトリナクリアにスポットを当てましたが町の風景、遺跡、そして食文化、方言・・・。どれをとっても独自の文化を持っており興味が尽きません。
是非とも次回のイタリア旅行のプランにシチリアを入れてみませんか?