サンタントニオ聖堂- Basilica di Sant’Antonio –
イタリア北部のヴェネト州・パドヴァの守護聖人・聖アントニオが眠るサンタントニオ聖堂。聖アントニオの聖遺物が祀られている聖堂には敬虔な信者が訪れ続けている。奇跡を沢山起こしたといわれる彼自身の遺骸にも奇跡が起こった。それは死後780年以上経っても腐敗していない舌と下顎。
イタリアの各町には守護聖人がいる。ヴェネト州パドヴァの聖人は聖アントニオ(1195年-1231年)であり36歳という若さで亡くなったが多くの奇跡を起こしたことから世界的に崇められている聖人の一人である。
聖アントニオの遺骸が安置されているのがサンタントニオ聖堂(Basilica di Sant’Antonio)。この聖堂は “イル・サント ( il Santo)” という名でも人々に親しまれている。
聖堂はロマネスク様式、ゴシック様式、ビザンチン様式、イスラム様式が見事に融合したイタリアを代表する建築物になっている。
聖堂は聖アントニオが亡くなった翌年である1232年に着工され16世紀に完成した。亡くなってすぐに聖人になりこうして彼を祀る聖堂の建築開始が早かったことにはそれなりの理由がある。多くの奇跡を起こしたからだ。
彼の起こした奇跡の一部を紹介しよう。彼はもともとポルトガルのリスボンで生まれた。後にイタリアへ来て、アッシジの聖フランチェスコに感銘を受け、弟子となった。ある時彼はリミニでキリストの教えを説いた。当時リミニには異教徒が多く聖アントニオの教えに全く耳をかさなかった。そんな中、彼は海に向かって説教を始めるとなんと魚達が寄ってきて水面から顔を出し、熱心に聞いていたという。その様子を見た異教徒達はすぐに改宗したという。
次にFerraraでの奇跡。聖アントニオはこの地で結婚し赤ちゃんができたばかりの夫婦と出会う。しかし夫は妻に対し不信感がありこの赤ちゃんは他の男との間にできたと疑っていた。聖アントニオがこの赤児を抱き話かけるとなんとまだ生まれたばかりの幼い赤ちゃんが「これが僕のパパだよ。」と言葉を発した。疑い深い夫は会心したという。この奇跡の影響か、赤児を抱いている聖アントニオの絵を目にする。
その他切断した足を繋ぎあわせたという奇跡を起こしたことから病気治癒の聖人としても有名だ。
最後に彼の有名な奇跡の話がこちら。ある異教徒は3日間餌を与えなかったラバを放ち、餌と教えのどちらをとるか聖アントニオを試した。空腹状態にかかわらずラバは迷わず聖アントニオの元へ行き跪いたという。この異教徒もこの奇跡に改宗したという。
そんな聖アントニオ自身にも奇跡といえる出来事が起こっている。それは死後780年以上経っているにも関わらず彼の舌や顎は原形を留めており聖遺物としてサンタントニオ聖堂に祀られている。
舌や顎は当然のことながら話すために必要な体の一部。その部位が780年以上経った現在でも奇跡的に原形をとどめているというのはまさにキリストの教えを説いた聖人にふさわしい聖遺物といえるのではないか。
聖アントニオが亡くなった1231年にパドヴァにある教会に埋葬されたがその後1263年に墓を移動するため掘り起こしたときに腐敗していない舌が見つかった。聖アントニオの舌が見つかって2013年でちょうど750年目を迎えた。
サンタントニオ聖堂はプラート・デッラ・バッレ(Prato della Valle)というお堀がある楕円形の見事な広場から小道を行ったところにある。プラート・デッラ・バッレ(Prato della Valle)の直ぐ真ん前にも立派なサンタ・ジュスティーナ大修道院(Abbazia di Santa Giustina)がある。あまりに立派でこれがサンタントニオ聖堂かと間違う人も多くない。
サンタントニオ聖堂は信者にとって非常に神聖な場所である。この荘厳な空気は信者でなくとも教会内に入れば感じることができるだろう。基本的に教会はフラッシュ撮影が禁止だがここはフラッシュなしでも撮影は禁止となっているのでマナーは守ろう。
教会内の左側にはサント礼拝堂( Cappella del Santo)があり聖アントニオの墓がある。ここには沢山の信者達が彼の恩恵・奇跡に感謝し、写真がところ狭しと貼られていた。
もう少し奥に進むと主祭壇の裏側に聖遺物礼拝堂(Cappella della Reliquia)があり聖アントニオの舌や下顎の他、彼が着ていた服や儀式用具等の遺物が飾られている。お棺もあり、小柄な人物だったような印象を受ける。この聖なる奇跡を見ようと世界中から訪れた信者や観光客でこの場所には常に列がある。
サンタントニオ聖堂にはガッタメラータ(Gattamelata)という愛称で知られているヴェネツィアの傭兵隊長の墓が彼の遺言どおり聖堂入って直ぐ右側の礼拝堂にある。彼の勇姿はルネサンス時代に活躍した彫刻家ドナテッロ作のガッタメラータ騎馬像としては聖堂の広場に堂々と立っている。
パドヴァにはジョットのフレスコ画で有名なスクロヴェーニ礼拝堂(Cappella degli Scrovegni)やラジョーネ宮( Palazzo della Ragione)などの重要な観光スポットもある。
パドヴァを観光するならPadova cardというものがありこのカードで効率良く観光スポットや教会などに入ることができる。種類は2種類あり48時間用の16ユーロ, 72時間用の21ユーロがある(2013年6月時点)。
バールでゆっくり時間を過ごしながらパドヴァを散策するものいいものだ。